OTC類似薬の保険適用外しについて【前編】
― OTC類似薬とは何か、なぜ今議論されているのか ―
最近よく聞くけれど、よく分からない話
最近、ニュースや新聞などで
「OTC類似薬の保険適用外し」
という言葉を目にする機会が増えてきました。
一方で、
- それは何の薬の話なのか
- いつから変わるのか
- 自分の通院や薬に関係があるのか
と聞かれると、はっきり分からない、という方も多いのではないでしょうか。
実際、外来診療の中でも
「薬がもらえなくなるんですか?」
「これからはドラッグストアで買わないといけないんですか?」
といった不安の声を耳にするようになっています。
この話題は、医療の現場にいる私たちにとっても、簡単に白黒つけられる問題ではありません。
制度の話、医療費の話、患者さんの自己負担の話が、複雑に絡み合っています。
今回のブログでは、
- 現時点で分かっていること
- なぜこの議論が出てきているのか
- かかりつけ医としてどう考えているのか
を、できるだけ分かりやすく整理してお伝えしたいと思います。
OTC薬・OTC類似薬とは何か
まず、今回の話題を理解するうえで、「OTC薬」と「OTC類似薬」という言葉の整理が必要です。
OTC薬とは、薬局やドラッグストアで、処方箋なしに購入できる薬のことです。
解熱鎮痛薬、かぜ薬、胃薬、湿布薬など、日常的によく使われる薬がこれにあたります。
一方、OTC類似薬とは、成分や効果がOTC薬とほぼ同じでありながら、医師が処方すれば保険診療として処方できる薬のことを指します。
つまり、
- ドラッグストアで自分で買えばOTC薬
- 医療機関を受診して処方されれば保険が使える薬
という、非常に境界のあいまいな領域の薬が存在している、ということです。
患者さんから見ると、「病院でもらう薬」と「ドラッグストアで買う薬」は、まったく別のもののように感じるかもしれません。
しかし実際には、成分や効き目がほぼ同じ薬が、二つのルートで存在しているケースは少なくありません。
具体例で考えると分かりやすいOTC類似薬
少し具体的な薬の名前を挙げると、
よりイメージしやすくなると思います。
たとえば、フェキソフェナジン(市販商品名:アレグラFX)は、花粉症やアレルギー性鼻炎でよく使われる薬です。
この薬は、医療機関を受診すれば保険診療として処方されますが、同じ成分の薬がドラッグストアでも販売されています。
また、ロキソプロフェン(市販商品名:ロキソニンS)も、多くの方にとって身近な薬でしょう。頭痛や関節痛、腰痛などで処方される解熱鎮痛薬ですが、こちらも同じ成分の薬が市販薬として販売されています。
このように、
- 医療機関で処方されれば保険が使える
- ドラッグストアで購入すれば自費になる
という 二つのルートが同時に存在している薬 が、実際には数多くあります。
今回議論されている「OTC類似薬の保険適用外し」とは、
アレグラやロキソニンのような薬について、「保険で処方する必要が本当にあるのか」を見直そうという動き
と考えると、理解しやすいかもしれません。
ただし重要なのは、
「同じ成分だから、どこで使っても同じ」ではない
という点です。
医療機関で処方する場合には、
- その症状が本当にその薬で対応してよいのか
- 他の病気が隠れていないか
- 併用している薬との飲み合わせに問題はないか
といった点を確認したうえで、薬を選択しています。
▶︎ 中編につづく
OTC類似薬の保険適用外しは、一見すると「制度の話」「医療費の話」に見えるかもしれません。
しかし次に考えるべきなのは、なぜこの議論が出てきたのか。
そして、それは本当に医療費抑制につながるのか。
次回の【中編】では、この制度が検討される背景にある医療費・財政の視点から、もう一段踏み込んで考えていきます。

